時には昔を懐かしんでみる。番外編である。
チェコのTondaは10年以上前から大戦中ロシア軍ソフトスキンのバキュームフォームキットを出していた。今でこそ、ZIS、GAZがインジェクションで入手できる時代となってしまったが、当時はそんなことになるとは想像だにできないAFV氷河期。HJ誌で呉氏がTondaと直接物々交換をして入手した(海外通販というよりはモデラー同士の国際交流という趣)ZIS-5やGAZを紹介したのが、私がこのメーカーを知ったきっかけだった。その頃は(現在も?)とてもバキュームキットを完成させる技能は持ち合わせていなかったこと、日本国内の通常の販路ではまずお目にかかれないであろうことから、当時はこれら東欧の風変わりなキット群に一種の憧れのような感情を抱いたものであった。ネットによって海外通販の敷居が格段に低くなった現在でも、AFVのガレージキットが『バキュームキット』から『レジン』、はたまた『インジェクションキット』にまで進化してしまった現状では、昔懐かしいこのメーカーの製品を市場で入手することは困難なのだろう。
このキットはTrack-Link Newsgroup/Buy+Sell(現在は、/Classifiedに改名)で出ていたものを個人売買で入手した。今更バキュームキットという時代でも無かろうが、ある種のノスタルジーに駆られての衝動買いだった。アイテム自体は、殆ど写真を見たこともないGAZのハーフトラック版。いまさらバキュームキットなんてと思いつつ、装軌部分はFortのZIS-42から、その他はTokoのGAZを使えば何とか完成まで持っていけるかもしれないと、己を欺いての購入であった。華奢な箱に梱包されたキットには、簡単な説明書(それっぽい図面と組立の手順)が含まれているが、そこは難物バキュームキットであるから、組立の順番が分かったところでどうなるものでもない。
このメーカー、現在は活動しているのだろうか。どんなアイテムが出ていたのかさえ明確ではない。過去に抱いた憧憬のせいもあり、このミステリアスなメーカーの過去・現在をもっと知りたい欲望に駆られる。Tondaに関する情報求む!
写真1:製品ボックス。何となく完成できるような錯覚を受けるのは、このメーカーの実力の成せる技か?
写真2:キャビン周り。それらしく形が出ているのでこの部分は使えそうな気もするが…
写真3:装軌部分。どひゃー。やられたーっ。本当にこのパーツだけを使って完成見本を作ったのか?